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腸内細菌叢ががん治療薬の効果を左右する?

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提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン
公開日:2018.7.31

これまでのがん治療薬とは異なる仕組みでがんに働きかける「免疫チェックポイント阻害薬」が注目されています。オプジーボやキイトルーダなど、日本でも使われている「抗PD-1抗体薬」もその一種です。

ただ、こうした薬は全ての患者さんに効果があるわけではなく、効く人と効かない人で何が違うのかが議論されています。最近、科学雑誌「Science」に掲載された二つの研究でその手がかりの一端が示されました。なんと患者さんの「腸内環境」が薬の効果を左右する可能性があるというのです。

腸内細菌の「多様性」がポイント

一つ目の研究を実施したのは、米国のテキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者ら。抗PD-1抗体薬を使用した進行メラノーマの患者さん112人から便を採取して分析し、腸内にどのような細菌がどの程度いるのかを調べました。

その結果、薬が効いた患者さんでは腸内細菌の多様性が高いことが分かりました。また、薬が効いた患者さんの腸内ではルミノコッカス属とフィーカリバクテリウム属という細菌の割合が高いのに対し、効かなかった患者さんではバクテロイデス属という細菌の割合が高いことも明らかになりました。さらに、薬が効いた患者さんの便をマウスに移植すると、そのマウスにも薬がよく効いたそうです。

抗菌薬の使用が治療薬の効果に影響?

一方、二つ目の研究はフランスのギュスターヴ・ルシーがん研究所の研究者らによるもので、抗PD-1抗体薬を使用した肺がんや腎がん、膀胱がんの患者さん249人のデータを調べました。

その結果、治療の前後に抗菌薬を使用した人は、使用しなかった人と比べて抗PD-1抗体薬の効きが悪く、生存期間も短いことが分かりました。また、腸内細菌を調べたところ、薬の効いた患者さんではアッカーマンシア・ムシニフィラと呼ばれる細菌が見つかる割合が高いことも明らかになりました。

「腸内環境の調整」役立つ日が来る?

人間の腸内には膨大な数の細菌が住んでおり、その種類の多様性が乏しいとさまざまな病気になりやすいことが分かっています。

一つ目の研究を行った米国の研究者は「腸内環境を調整することでがんの治療効果を高められる可能性が見えてきました」とコメント。ただ、「具体的にどのような腸内環境が望ましいのかなど不明な点も多く、現時点では、がん患者さんに安易にプロバイオティクスの摂取を勧めてはならないと考えます」と慎重な姿勢を示しています。

米国の別のがん専門家もこのテーマの検証は始まったばかりだと強調しつつ、「がん患者さんの腸内細菌を調べることで抗PD-1抗体薬の効果を予測し、個人にあわせた医療を提供できるようになるかもしれません」と期待を示しています。(HealthDay News 2017年11月2日)

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