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免疫療法の進展から見るがん治療の変容

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提供元:P5株式会社
公開日:2017.6.22

免疫チェックポイント阻害剤:キイトルーダが、DNA修復異常を示す固形がん全般を対象に米国で承認されました

米国メルク社の免疫チェックポイント阻害剤:キイトルーダが、DNA修復異常を示す固形がんに対する薬として、米国食品医薬品局(以下、FDA)(※1)に承認されたことが、5月23日に発表されました。

今年もシカゴで世界最大規模のがんの学会であるASCO(米国臨床腫瘍学会)が開催されました。
そこではがんの免疫療法が一番のトピックスとなっていて、関連する数多くの発表がありました。

このがんの免疫療法というがん治療の新たな可能性を開拓したのが、免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれる薬剤です。
このような薬剤の一つが、大手製薬企業の米メルク社の抗PD-1抗体「キイトルーダ®」(一般名:ペムブロリズマブ)(※2)です。

今回このキイトルーダについて、標準治療方法で効果がなく、DNA修復異常を示す進行固形がんに対する利用が承認されました。
これまでの抗がん剤は、がんのある臓器別に承認されていました。
例えば肺がんで承認された薬は、他のがんで使うことはできませんでした。
今回の承認では、がんの発生部位に関わらず、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構の欠損といった、DNA修復異常が認められる固形がん全般に処方することを認めたものとなります。
DNAの修復異常があると、がんの異物としての性格が強くなり、免疫系に認識されやすくなります。
そのためこの異常があるがんについて、免疫チェックポイント阻害剤が効きやすくなるのです。

免疫療法関連の薬剤は、昨今開発されているがん治療薬の過半数を占め始めています。
昨年10月、米国の国立がん研究所(National Cancer Institute)(※3)は、Cancer Moonshot(※4)の一環で、免疫療法を、がん治療を有意に前進させ得る”transformative research topics”の一つとして選定しました。
参照URL:https://www.cancer.gov/research/key-initiatives/moonshot-cancer-initiative/blue-ribbon-panel

このように、がん治療は、大きな変容の時を迎えつつあります。
ベイラー医科大学(Baylor College of Medicine)のChief of Surgical OncologyのSteven Curley医師は、御自身の投稿で、下記のように言及されています。
「我々は、悪性疾患に対して、必ずしも撲滅できなくとも上手くコントロールしていく方法を実践していく必要がある。」
「遺伝子異常を十分に理解ができれば、患者さんのQOL(Quality of Life:生活の質)を維持しつつも、がんを長期間コントロールすることは恐らく可能になるだろう。」
原文URL:https://www.linkedin.com/pulse/what-cancer-care-look-like-future-oncologist-heres-i-see-curley

Precision Medicine(精密医療)の社会実装が少しずつ進みつつある中で、がんに対する治療のみならず、その後のQOLも踏まえた、がんとの付き合い方に対する考え方にも変化が必要となってくるのかもしれません。

※1:米国食品医薬局(FDA: Food and Drug Administration)
※2:KEYTRUDA:T細胞のPD-1に結合することにより、T細胞が、がん細胞を見つけて攻撃するのを助けるヒト化モノクローナル抗体
※3:国立がん研究所(National Cancer Institute):米国の国立衛生研究所(NIH)の一部、米国の対がん戦略である国家がんプログラムを調整する役割を担う
※4:Cancer Moonshot: 2016年に立ち上がった米国のがん撲滅に向けた国家プロジェクト