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神経膠腫(グリオーマ)に対する変異型IDH1阻害剤の第 I 相臨床試験が始まりました

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提供元:P5株式会社
公開日:2017.5.30

国立研究開発法人国立がん研究センターと第一三共株式会社は、神経膠腫(グリオーマ)を対象にした、変異型イソクエン酸脱水素酵素(IDH1)の選択的阻害剤(DS-1001)の第 I 相臨床試験を開始したことを3月1日に発表しました 。

神経膠腫(グリオーマ)は、脳の中の神経細胞と神経細胞の間を埋めているグリア細胞(膠細胞)ががん化したものです。脳に発生するがんの約20-30%を占めています。 脳に浸潤して広がることが多く、境界線が不明瞭なために、手術でがんの部分を完全に摘出することが困難です。そのため手術後に放射線療法や化学療法を行うのですが、数か月から数年で再発してしまうことが多いのです。このように神経膠腫は悪性度の高いがんであり、治療法が限られているので、新しい薬剤の開発が必要とされています。

がんの多くは、生まれた後に遺伝子が変化(変異)することが原因で発病します。遺伝子の変異が、細胞を無秩序に増やしてしまうような変化を引き起こしてしまうのです。神経膠腫も例外ではなく、EGFR, PDGFRA, FGFR, CDK4といった遺伝子の変異が原因となっていることが分かっています。同様に今回の薬剤のターゲットとなっているIDH1(イソクエン酸脱水素酵素1)の変異も神経膠腫の発病にかかわっていることが知られています。

今回の臨床試験で使用される、第一三共薬品が開発した変異型IDH1選択的阻害剤(DS-1001)は、脳内への移行性があり、動物実験でIDH1遺伝子に変異がある悪性脳腫瘍・急性骨髄性白血病・軟骨肉腫の増殖を抑制することが示されています。またこの薬剤は、がん細胞にみられる変異型IDH1を特異的に阻害し、正常細胞で発現する正常なIDH1に対する作用は極めて弱いことが示されています。

IDH1遺伝子の変異は、グレードII・IIIの神経膠腫(星細胞腫・乏突起膠腫)と診断された患者さんの7割以上に認められます。また神経膠腫のなかでも悪性度の高い神経膠芽腫(グリオブラストーマ)の1割程度でもこの変異があります。

今回の第 I 相臨床試験の対象となるのは、標準的治療法のない再発のIDH1変異のある神経膠腫(グリオーマ)の患者さんです。臨床試験は、国立がん研究センター中央病院など複数の医療機関で実施されます。

参照URL:国立がん研究センター 変異型IDH1阻害剤の悪性脳腫瘍に対する第 I 相臨床試験開始について